ピーター・グレイ「遊びが学びに欠かせないわけ」つねに遊びを求める姿勢とは?
ピーター・グレイ「遊びが学びに欠かせないわけ」を読んだ。吉田新一郎さん翻訳のシリーズ?である(吉田さんが翻訳する本は一貫して彼の信念に沿った本が選ばれるので、良くも悪くともシリーズの名前がふさわしい)。
著者は、ボストンカレッジの心理学部教授。自分の子育てをきっかけに、「遊び」が持つ学習の価値について先行研究などを調べて書いた本である
遊びの特徴ってなんぞや?
この本で面白かったのは、子供達の「遊び」の特徴について、これまでの「遊び」についての先行研究も踏まえながらポイントをまとめてくれているところである。特に後半の章で「遊び」を、次のような特徴を持った活動だと説明しているところが面白かった。
- 遊びは、自己選択的で自主的である
- 遊びは、結果よりもその過程が大事にされる活動である
- 遊びの形や規則は、物理的に制約を受けるのではなく、参加者のアイディアとして生まれ出るものである
- 遊びは想像的で、文字どおりにするのではなく、「本当の」ないし「真面目な」生活とはいくらか意識的に解放されたところで行われるものである
- 遊びは、能動的で、注意を怠らず、しかもストレスのない状態で行われるものである
遊び続けるためには何が必要なの?
また、もう一つ興味深かったのが、草野球を例にしながら、屋外での子供達の遊び(ここではスポーツ)が、体育の授業のような組織化された遊びとどう異なるのか説明している箇所である。
- 試合を続けたければ、全員を満足させ続けなければならない
- ルールは修正可能で、プレーヤー達によって作られる
- 対立は話し合い、交渉、妥協で解決する
- あなたのチームと相手チームの違いは一切ない(メンバーは常時入れ替わり可能である)
- 良いプレーをして楽しむことの方が、勝つことよりも重要
このうち最も大切なのは、最初の「続けたければ、全員を満足させ続けなければならない」だろう。組織化されていない遊びは、離脱が容易なだけに、参加者全員が楽しめるように、その都度のルールの調整が行われる必要がある。これは、同じスポーツやゲームでも、大人立ち会いのもとで組織化された遊びにはない特徴である。
僕はもともとこういう外遊びが嫌いな子どもだったのだけど(草野球は僕の人生で一度も経験がない)、この特徴はなるほどなあ、と面白かった。僕の場合は、これに近いことをトランプなどのカードゲームで経験しているのだろうけど(例えば、面白くなるように特別ルールを作ったり、小さい子が混じる時にはハンデをあげたり、とか)。こういう遊びの特徴が、子供たちの感情的な発達に果たす役割は大きそうだ。こういうことはこれまで考えたこともなかった。
そして、ここで強調しないといけないのが、上記のような特徴を持つ「遊び」は大人がいない場面で起きるということ。大人が監督者としている草野球では、何より大事な「続けたければ、全員を満足させ続けなければならない」というルールが発動しないのである(大人が気を利かせて調整してしまうから。