友達って結局何人くらいがちょうどいいの?ダンバー数とつながりの進化心理学レビュー

どうも皆さんこんばんは、gabigonです。

今回は、ロビン・ダイバーさん著書の「友達って何人必要?ダンバー数とつながりの進化心理学」についてレビューしていきたいと思います。

今回紹介させていただく本は、簡単に言うと、結局人生において友達って何人くらいがちょうどいいの?という問いに答えてくれる本です。

昔から小学校などで、よく友達100人できるかな?っていう曲かなんかを聞いて友達100人作ろうとした人は僕だけじゃないはず………。

そんな僕ですが、実際は10人くらいかな?という感じでしたが、皆さんはどうですか?


今回の本を通じて僕は、そんな友達は多い方がいいに決まってんじゃんという固定概念が消え去ることになりました。

ということで、ここから解説に移っていきます。

ダンバー数とは?

まず本書で述べているダンバー数という言葉、皆さんは聞いたことがありますでしょうか?

少なくとも僕はこの本を手に取るまでは聞いたこともありませんでした(汗)。

ダンバー数とは、一人の人間が持てる友好関係の限界は150人までという限界を表す単位です。

わかりやすくかみ砕こうとすると、親友と呼べる人数は平均して5人だそうです。
そして次に中の深い友人が15人、そのまた次にただの知り合い程度の人たちが50人、そして最後に顔見知り程度の人が150人という風に書いていくと、丁度3の倍数となるわけですね!

このような単位?というよりかは方式?がダンバー数というわけですね。

つまり、ここから言えることは人は限界まで友達を作ろうとしても150人が限界ですぅぅぅぅぅぅぅぅっぅぅぅうってことですね。(笑)

 

まとめ

ということで、ここからまとめです。

少し早い気もしますが、今回の本は「ダンバー数進化心理学」についてレビューしてきました。

今回の本は、結局友達は最大でも150人までしか作れないということですね。

本書の中ではさらに心理学を用いて、もう少し踏み込んだ話もしていますが簡単にいうと上記の通りです。

 

もともと友達が少ない僕にとっては、この情報は割と朗報?な気もしましたが、皆さんはどうでしたか?

ということで今回は以上です!

それでは、またいつか何処かで。

ばいばい!

学びとは何か――〈探究人〉になるために

この本では、その意味で人間の変化を、環境の影響を受けつつ、多くの要素同士の相互作用によって生じる「無意識的なメカニズム」と捉え、その過程を「創発」というキーワードで捉えようとするのだ。これは、人間の成長や変化をコントロール可能なものと考える従来の教育観(「教えたらできるようになる」という教育観)とは大いに異なるものだろう。

本書は、それぞれの章の冒頭に「その章のまとめ」が書かれているために非常に読みやすい。それらの主張をさらに簡単にまとめると次のようなものになる。

「能力」なるものは存在しない。それが人間の内部に安定的に存在する仮説は誤りであり、実際には知的営みは文脈依存性が大きい。

知識が人から人へそのまま伝わる事はない。知識(有用な知識)とは、本人が経験のネットワークの中で、さまざまな感覚の競合・強調によって構築するものである。

練習による上達は、直線的には進まない。それは複数のリソースの相互作用の中で複雑なうねりとなって表れる。

発達は段階的に進むわけではない。子どもは複数の認知リソースを持っており、使用頻度の高いリソースの割合が変化する過程を、他者が「発達」と認識するのである。

ひらめきは、理由なく突然訪れるのではない。身体を用いた環境との相互作用の中で、多様な試行が行われた結果として制約が緩和され、訪れるものである。

これだけだと「何のこっちゃ」と思われる方もいると思うが、それは本書をお読みいただきたい。少なくとも、上記のまとめの太字部分を読んで「え、そうなの?」と興味を惹かれた方は、この本を読む価値がある。

複数のリソースによる「揺らぎ」が発達を生む

個人的に一番面白かったのは第4章だ。この章では、ピアジェらに代表される「発達段階」という考えがそれまでの「漸進的成長」という考えを否定して子どもの独自の価値を認めたことの歴史的意義を認める一方で、1980年代あたりからこの考えに反する実験結果が次々と出てきたことを主張している。そして、発達を「複数のリソースのせめぎ合い」のモデルで捉える。その際に、複数の相反するリソースが同時に起きてしまうような「揺らぎ」ことが、次の発達を生み出している、と主張しているのだ。この辺の話は、「発達」が一筋縄ではいかないものを示す話として非常に面白かった。

学校教育への示唆

また、筆者はこうした知見をもとに、第6章で学校教育への示唆も述べている。「問題があり、正解がある」「基礎から応用へ進む」「考えるのは頭の中である」「知識や学習は転移する」「スモールステップで教えることが大事」などの「素朴教育論」が、いかに実態から離れているか、そして創発を阻害するかを述べるくだりは、読んでいて思わず笑ってしまう。ただ、実際に学校教育に関わっている人なら「じゃあ、どうしろって言うのよ」と言いたくなるだろう。僕も言いたくなる。

では、それに対して筆者はどのように述べているのか。それは本書をお読みいただきたい。ヒントになるのは、「徒弟制」、状況的学習論である。これは国語科で言うと、下記エントリで引用した「実際に言語文化が立ち現れる実の場を再現しつつ、それに即した真正な学びを通して、言語文化そのものに馴染んでいくような学び」ということになるのだろうか。

市場サイクルを極める【要約・書評】ハワード・マークス

〇〇ショックで株価大暴落
○○バブルで株価絶好調
このようなニュースをよく耳にします。

暴落や暴騰には一定のサイクルがあり、優秀な投資家たちは株価の高低のサイクルを見極めて利益をあげています。

そこで今回は市場のサイクルを見極め、利益をあげる方法を解説している1冊を紹介します。

本のタイトル
市場サイクルを極める 勝率を高める王道の投資哲学

著 ハワード・マークス

訳 貫井佳子

日本経済新聞出版社


市場サイクルを極める 勝率を高める王道の投資哲学 (日本経済新聞出版)本の要約・ポイント
本書のポイントは市場にはさまざなサイクルが存在していることです。

景気サイクル
企業の利益サイクル
投資家の心理サイクル
信用サイクル
このようなさまざなサイクルが複雑に絡み合い、株価などを形成しています。

投資家は企業分析や会計の知識をつけると有利ですがそれでは不十分で、成功している投資家はサイクルを見極める能力も優れているのです。

そこで本書はどういう企業に投資すれば良いのかではなく、市場サイクルとはどのように動き、現在サイクルのどの位置にいるかを分析する方法を解説しています。

本書を読めば市場サイクルの基本知識や現在サイクルのどの位置にいるのかを把握することができる

景気過熱時の買いや暴落時の狼狽売りを防ぐことができる

本書を読むと市場には一定のサイクルが存在し、適正な価格より高くなったらいずれ下がり、安くなったら高くなる傾向にあることがわかりました。

本書ではサイクルを「ふりこ」で例え、振れ幅が大きいほど価格の上下が激しくなるといいます。

なおなお
たしかにバブル崩壊後は大暴落しますし、大暴落後に株価は大きく回復することが多いですね。
このことをわきまえておくと、次のような判断ができるようになります。

株価が暴落しているけど損失を確定させずに株価が回復するのを待つ
景気絶好調のときに周りの行動に合わせず、割高な投資をしない
株価暴落時のときは株主たちは焦って儲けを出すよりもいかに損失を少なくするかに必死ですぐに株式を手放そうとします。

反対にバブル時には誰もが永遠に株価が上がり続けると信じ込み、割高な価格でも投資してしまう心理があります。

ですが、市場サイクルを知っていると、

暴落時に積極的に買い増しをして利益をあげることができる
暴騰時に割高な株式を買うことなく、暴落に備えることができる
なおなお
市場の平均点を狙うインデックス投資はゼロになるケースは少ないですが、個別株の場合は企業が倒産する可能性があるので株式が紙切れになる可能性があります。なので暴落時にとにかく買い増せばいいわけではありませんので注意が必要です。
とはいえ必ずしも上がったら上がった分だけ下がるわけではなく、さまざなサイクルや投資家の心理状態が複雑に絡み合って株価を形成します。

なので市場のサイクルについてより深い知識を身につけたいと思った方はぜひ本書を読んでみてください。

本書を読むと株価の短期的な上下に焦ることなく利益をあげることができる

サイクルは市場だけでなくあらゆるジャンルにも存在する

私がこの本を読んで、サイクルの知識は市場だけではなくさまざまな場面でも応用することができると感じました。

たとえばコロナウイルスでも第2波、第3波と言われるように感染者に波、つまりサイクルが存在します。

それに一般の企業の仕事でも繁忙期と閑散期のサイクルも存在します。

なおなお
このように考えると日常のさまざまなところにサイクルが存在していることに気づけますね。
このようにあらゆる場面にサイクルが存在していることがわかります。

本書は市場についてしか書かれていませんが、サイクルの動き方やサイクルのどの位置にいるかという知識は他の場面でも生かすことができます。

なので本書を読むと、

あらゆるものにはサイクルが存在している

ということに気づき、それぞれの立ち位置によって最適な行動を取れるようになると思います。

「何事にもサイクルが存在している」と考えられるようになると今後さまざまなところで役に立つでしょう。

市場サイクル以外のサイクルにも応用することができる

まとめ サイクル思考を身につけよう!

いかがだったでしょうか。

サイクルの存在に気づくことができれば、周りとは違う行動をすることができるようになり、利益をあげることができます。

これは市場のサイクルだけでなく、あらゆる場面でも当てはめることができると思います。

未来を予想する手がかりにもなりますので決して無駄な知識になりません。

なのでぜひサイクルに興味を持った方は読んでみてください。

ということで今回は以上になります。

それでは、また!

マネジャーの最も大切な仕事 95%の人が見過ごす「小さな進捗」の力

今回紹介する本は、こちらになります。

本のタイトル
マネジャーの最も大切な仕事 95%の人が見過ごす「小さな進捗」の力

著 テレサ・アマビール、スティーブン・クレイマー

監訳 中竹竜二 訳 樋口武志

本の紹介・要約
本書のポイントは、ビジネスの成功と社員の幸せを両立するためには、豊かなインナーワークライフ(個人的職務体験)が必要であることです。

そこで、豊かなインナーワークライフを育むためには次の3つの状況が必要だと言います。(本書p.9を参照)

ポジティブな感情
強い内発的モチベーション
仕事仲間や仕事そのものへの好意的な認識
さらに、この3つの状況を作り出すには、仕事の進捗をサポートすることや仕事を直接的にサポートすること、良好な人間関係をサポートすることが重要だと述べています。

そして、この3つのサポートの中で一番効果が高いのは、進捗をサポートすることです。

これが本書の一番伝えたいことになります。

さらに本書では、図表などを用いて説明していたり、コラム記事も豊富でとても理解しやすい内容になっています。

以上が簡単な本の紹介になります。

次に、私がこの本を読んで感じたことを紹介します。

一番モチベーションが高まるのは前より成長を感じたとき

私がこの本を読んで感じたこと
私がこの本を読んで感じたことは、本書のタイトルはマネジャーの仕事と書かれているのですが、マネジャーでなくても、私が私自身をマネジメントする上でも非常に有効であるということです。

進捗とは簡単に言えば成長です。つまり、自分の成長を実感したときに、一番やる気が上がるということですね。

なおなお
たしかにそうだね!
そこで、自分が取り組んでいることにおいて、まずは「自分はいまどのくらいのレベルにいるのか」を把握します。

それから「どれくらいレベルが上がったのか」「どれくらいゴールに近づいているのか」を定期的にチェックすると、自分をうまくマネジメントできるのだと思いました。

これってサポートしてくれる上司がいたら最高ですが、別にいなくても自分でできることだと思います。

毎日の仕事の終わりに日記を書くのも良し、テストなどで現在の自分の実力を測れるものがあれば定期的に利用するのもアリですね。

こう考えると、進捗を測る方法って日常生活にたくさんありそうです。

そこで、次に私が実際に進捗状況によってやる気が左右された経験を紹介します。

毎日自分の成長を意識しよう!

進捗によってやる気が左右された経験
私はこの本に2年以上前に出会ったので、すでにこの進捗に対しては実践済みです。

実践している一つの例としては、文章を書くときですね。これはみなさんの中にも実際にされている方も多いと思ったので、例としてあげさせていただきました。

私は大学生なので、レポートを何文字以上書かなくてはいけないという課題や試験がたくさんありました。

なおなお
マジでめんどくさい…
そこで、このブログもそうですが、いま何文字書いているのかを意図的に確認するようにしています。

「いま5000字書けた、残り1000文字だ!」とわかるとけっこうやる気が出るものです。

ラストスパートとよく言われますもんね。

それに本を読んでいるときだって「いま何ページまで読んだ」ということを把握したほうが読み進めやすいでしょう。

こういう身近な例をあげると、「進捗ってたしかに重要だな」とは思いませんか?

なおなお
たしかに大切だね!
逆に進捗によってやる気がなくなってしまった体験として、こちらは意図的ではないのですが、ゲームのデータが消えてしまったことです。

「せっかく100時間くらいプレイしてきたのにまたゼロからじゃん!」と泣きそうになったことがあります。

実際にデータが消えるとやり直そうという気持ちが一気になくなってしまったのでそのゲームをやめてしまいました。やる気が完全になくなりましたね。

みなさんも実際に仕事をしていて、最後の最後に「全部やり直し!」と言われて傷ついた経験はありませんか。

私だったら、「ちょっと給料減っても良いからこのままでお願いします!」と頼みこむと思います。

そう考えると進捗の力、恐るべしですね。

まとめ 自己成長はやっぱり大事⁉
いかがだったでしょうか。

自分の成長を把握する、これって一見大事そうに見えないのですが、実際に実感してみると進捗の大切さがわかります。

私たちは、お金とかやりがいなどにやる気を感じると思いがちなので、盲点でしたね。

みなさんも一度、日常生活や仕事に進捗を意図的に組み入れてみませんか。かなりモチベーションが上がりますよ。

私も本ブログ運営において、これまでに積み上げてきた記事数や訪問してくださった人数の増加を誇りに思い、ブログ執筆に励んでおります。

進捗に関しては、意識さえすれば、ある程度実感できるようになるので、あなたも実践してみませんか。

デメリットはないので超お得です!

ということで今回は以上になります。

それでは、また!

 

「ネット速読の達人ワザ」 by コグレマサト

情報は溢れている。だからこそ選ぶ必要がある
 

 

「速読」というと、長い文章をパパッと眺めて一瞬で理解する特殊技術を思い起す人が多いかもしれない。

だが、本書ではそのような特別な技術を習得することを目指しているわけではない。

むしろ、選択眼をいかに鍛えるか、ということが主眼となっている。

 

 

現代に情報はまさに溢れ返っている。

たとえテレビを見なくても、新聞を読まなくても、必要な情報は何らかの形で届くものだ。

裏を返せば、現代においては、情報が多すぎて、何を読んだらいいか分からない、ということが問題なのだ。

無駄なモノを読むことに時間を取られず、いかに有効な情報に素早くアプローチして新鮮かつ注目を浴びるネタに仕上げるか。

プロのブロガーとして、ブログの広告収入で生計を立てているコグレ氏だからこそ書ける、まさにプロの情報収集術なのだ。

 

 

今さら聞けないが満載!
 

 

本書はネットにおける情報収集の初心者をターゲットとして書かれている。

従って、ある程度以上の知識がある人にとっては、「これはもう知ってるよ」という情報も多いことは確かだ。

だが、これからネットでの情報収集を始めたいという人や、自己流でやっているけど、まだ上手くできていないという人には最適のテキストだろう。

そしてまた、自分なりに習熟していると思っている人も、通読することで、新たな発見があるだろう。

 

 

僕は普段あまり2ちゃんねる周辺の情報を見ることがないのだが、本書で「まとめサイトの効率良い回り方」を学んだので、是非試してみようこと思っている。

あと、RSSリーダーからInstapaperに送って後から読むという方式は、僕自身以前やっていたものの、最近は止めてしまっていたのだが、本書を読んで、最新バージョンのInstapaperやRead it Laterがどのように進化しているか、再確認するべきだと感じた。

 

 

ブロガーならではの裏技が面白い
 

 

情報収集の重要なテクニックというわけではないのだが、面白かったのが、ブロガーならではのちょっとした小技の数々だ。

個人的に面白かったのは、タブブラウザのウィンドウをテーマごとに分け、それぞれのウィンドウの中で個別の記事をブラウズするというもの。

取り扱う分野が広い「ネタフル」管理人ならではの小技だなと感心した。

 

 

一方で個人的にちょっと物足りなかったのは、本書が情報収集の部分に特化していて、情報発信には触れられていないことだ。

これは本書が速読の本なのだから当たり前のことで、僕のワガママなだけなのだが、コグレさんがいったいどうやってあれほどの量と質の記事をガンガン更新し続けることができるのかも知りたかった。

是非自作では、アウトプット編をお願いしたい(^-^)。

 

 

まとめ
 

 

多くの人に読まれるためには、ブログの記事の中身が面白くなくてはならない。

そのためには、ただ新しい情報を集めれば良いのではなく、「面白い」「まだ皆が知らない」記事を集中的に集める必要がある。

世の中には何百万というブログが存在し、日々更新している人も多いだろうが、ブログで食うことができている人は、ほんの一握りだろう。

 

 

そんな数少ないプロ・ブロガーだからこその情報収集術である。

iPhoneAndroidなどのスマートフォンを新たに購入した人や、新たにMacBook AirMac生活をスタートしたばかりの人なども多いだろう。

「情報収集はニュースサイトを眺めるくらい」「あとはテレビのニュース」という人は、是非本書を読んで、本格的なネット速読にチャレンジしてみてもらいたい。

 

「熟達」の持つ二つの側面に光をあてる。今井むつみ『学びとは何か』

臨機応変な判断」ができるのはなぜ?

この本が取り扱うのは、例えば次のような話題だ。

そもそも「知識」とは何か。それはただの「記憶されたもの」とどう違うのか。

人はどのようにして「知識」を身につけて(=構築して)いくのか。

一流の熟達者はなぜ「臨機応変な判断」ができるのか。

暗記は本当にだめなのか。

これらの話の中でも特に面白かったのは、熟達者の「臨機応変さ」についての部分だった。たとえば、授業でも、初心者(例えば教育実習生)が指導事項をしっかり決めて「指導案通り」の授業を無理に展開しようとするのに対して、ベテラン教員は肩の力が抜けきった感じで、傍目にはやる気なさそうにさえ見えるのに、授業になると「押さえるべきところを押さえる」ことができる(もっとも、本当にやる気のない人も皆無ではないだろうけど、まあそれはおいておこう)。こういう差は、何によって生じるのだろうか。

筆者よれば、それは基本的には「膨大な経験に裏打ちされた、体系化された知識」である。熟達した教師にはそれがあるので、仮に教室で未知の状況に直面にしても、その本質や結果について大雑把な見通しを持つことができる。ただし、その意味では、ただ経験するだけ、ただ経験を覚えるだけでは、それが直観的思考に結びつかず、臨機応変なベテランにはなれない。経験が意味づけされ、目の前の状況に応じて取り出せることが重要なのである。

熟達がはらむ二つの対立する要素

この本は「学習の仕組みを科学的に説明する」入門書なので、同じ分野の類書を読んだ経験のある人には、「聞いたことのある」話も続く。ただ、熟達という現象を次のように説明している点は、非常にわかりやすかった。

そもそも熟達という過程は対立する二つの方向性に折り合いをつけなければならない過程にほかならないのだ。…熟達するにつれて、知識は大きなシステムとなり、安定し、いろいろと考えずに自動的に身体が動くようになる。それはものごとを正確にぶれなく行うためにとても大事なことだ。しかし一方で、それは慣れとなり創造性の足を引っ張る。一流の熟達者が創造的であるのは、彼らが「思い込み」にはまらないように、常に意識的に思い込みを破ろうとしているからだ。

たしかに、熟達とは様々な処理を脳内で「無意識化」「自動化」できるということ。いったん乗れるようになってしまえば、何もしなくても自転車に乗れるのと似ている。しかし、それができるということは、一方でその「自動化する処理システム」そのものについては無自覚になり、批判的にとらえることができなくなる危険性を孕んでいる。その危険性に向き合えるかどうかが、一流の熟達者とそれ以外の人の分かれ目なのあろう。

必要なのは、自分自身の「処理システム」を自動化するほどに大量に経験した上で、それに自覚的になり、挑戦していくこと。口で言うのは簡単だし、リフレクションが大事だと言うのもまたたやすいけど、実際問題として、こういう人に、どうしたらなっていけるんだろう…。長い時間をかけて日々練習を重ねて自然と身体が動くようにしつつ、かつその「自然さ」をも客観的に捉えてそこから自由であろうとする。超一流の人というのは凄いのだなあとなんだかとても遠い人のように思えてしまう僕なのであった。

広瀬友紀『ことばと算数 その間違いにはワケがある』

見えてくる、言葉と算数の共通点と相違点

この本を読んで良かったのが、言葉と算数の共通点や相違点を、これまでより大きな視点で捉え直すことができたこと。例えば第1章では、四則演算の結合法則や分配法則が、「迷子になった選手の愛犬」「ブラジル及びドイツに勝つ」などと比較されている。一方第4章では、「1+1=1」という記法と「1と1を足す」という言語表現の間にどういう関係があるか考察される。どちらも「記号」といえば記号の数学の言葉と日常言語の共通点や相違点、なかなか興味深い。さらに第6章でも、「マイナスのマイナス」と言語の二重否定表現がからめられている。こんなふうに、算数の話が言語の話をするマクラになっている感もあるのだけど、日常使い慣れた言葉について、数式と比較しながら改めて見直せるのはとても面白い。

正三角形は二等辺三角形

日常の言葉と算数の言葉をめぐる話題の中で、個人的に一番面白かったのは、『子どもに学ぶ言葉の認知科学」でも少し書かれていた「正三角形は二等辺三角形に入るのか?」という話だった。というのも、僕も昔は「定義上、入るに決まってるじゃん」と思って、それをはっきりさせない小学校の指導に「仕方ないなあ…」くらいに思っていた節があるからだ。でも、本書の第3章を読むと、そういう自分の浅慮を恥じるしかないのである。

ポイントは、グライスの会話の公理や、「語彙獲得バイアス」の一つである「相互排他性バイアス」である。面白いところなので詳しくは本書を読んでほしいのだけど、要するに「正三角形と二等辺三角形は別もの」と認識する方が、もともと人間には合理的なのである。「正三角形は二等辺三角形の一部」という算数的な「正しさ」は、子どもにとっては全く自然ではない。そこをどう埋めるのかという教科書会社の苦心、読んでいて、算数の教科書を作るのも大変なんだなあ…としみじみ思ってしまった。

ちなみにこの語彙獲得バイアス、他には「事物全体バイアス」「事物カテゴリーバイアス」「形状類似バイアス」などがあるそう。このへんの話も深掘りすると面白そう。

他では、僕も油断すると混乱してしまう「かける数」と「かけられる数」という言葉など、本書では算数に関連する言葉の話題が豊富。『ちいさい言語学者の冒険』から一貫する「間違いにこそ子どもの論理がある」姿勢もあって、気軽に楽しめる読み物になっている。算数にも国語にも関わる小学校の先生はもちろん、普通の国語教師の人にもおすすめしたい1冊だ。

さて、今井本に広瀬本と、ここまで2冊読んできた「言葉と算数」本、せっかくなので夏休みにもう1冊、よく引用されている谷口隆『子どもの算数、なんでそうなる?』も読んでみようと思います。さてさて、どんな感じが楽しみ。